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不動産業界でIT化を進める3つの視点

2019/03/14

——なぜ不動産業界は他業界と比べてテクノロジーの導入が進みにくいのでしょうか?


それは不動産市場の特殊性が原因だと考えています。
不動産は消費財やアパレルと違って、お客様(カスタマー)が日々接するものではなく、人生で何度も購入するものではありません。また日本全国に十数万もの法人格の店舗があると言われています。その2つの特徴が大きく関係していると考えています。
お客様が便利になっても、不動産会社は便利にならない。

例えば、飲食店を予約するときはスマホで空き状況が見られますが、賃貸物件を探すときには不動産会社に問い合わせをしない限り最新情報はわかりません。そのような状況にIT化のニーズはもちろんありますが、借りたい人からしても一度物件を決めてしまえばしばらく物件を探す機会は訪れないため我慢してしまう人が多いのが実態です。
またそのようなテクノロジーを活用したサービスも、お客様(カスタマー)のメリットにフォーカスしているものがまだまだ多い。それでは不動産会社(クライアント)への導入が進みません。
例えばオンライン上で物件が空室なのか、申し込みが何件入っているのかがわかるサービスを作りたい、と考えたとき、お客様(カスタマー)へのメリットはわかりやすいですが、不動産会社(クライアント)の立場ではそれを入力する手間が増えるだけ。よって、テクノロジー化を進めるにはカスタマーのメリットとあわせて不動産会社(クライアント)のメリットも考えることが不可欠なのです。

不動産会社は、コンビニの数より多い

不動産業界でIT化を進めていくためにはもう1つ、「不動産会社(クライアント)に対する広いネットワークと深い信頼関係」が必要です。マーケットの特徴ではありますが、不動産会社は全国で十数万店舗あり、実はコンビニエンスストアより多いのです。
つまり、賃貸業界は数社がマーケットの大半を占めるような寡占市場ではなく、数店舗を経営される中小規模の法人が多いです。そのため、マーケット全体を変えるには広いネットワークと深い信頼関係が重要になります。
似たような事例を挙げると、今現在、他の業界でスマホ予約などテクノロジーの活用が当たり前になっているのも、スマホ予約を実装したサービスについて、営業部隊が1件1件丁寧にそのメリットを伝えて信頼関係を築いてきていたからです。一口にIT化と言っても、その裏には十分な人手が必要になるケースもあるのです。
テクノロジー×顧客接点で、業界を変えていく。

——不動産業界を変えていくために必要なことは何でしょうか?

まずは、不動産会社(クライアント)にもお客様(カスタマー)にもメリットがあるテクノロジーが必要だと思っています。
お客様(カスタマー)には、購入も含めた一連のプロセスをすべてオンラインで完結するようにします。それと同時に、家探しの全プロセスでの体験自体をすばらしいものに変えていきたいです。
不動産会社(クライアント)に対しては、もっと業務負荷を下げられるような工夫を提供し、業界の生産性を上げるとともに、お客様(カスタマー)に向き合う時間を増やしていければと思います。
ReTech(不動産テック)という観点で言えば、お客様(カスタマー)向けには、VR/ARに、不動産会社(クライアント)向けには業務支援のテーマに特に可能性を感じています。業務支援とは例えば、追客管理や内見業務、管理会社とのやりとりなど、あらゆる工程においてデータを活用して生産性を上げていくサービスのことです。
次に必要なのは、それらのテクノロジーを着実に広げていくこと。どんなサービスも普及しなければ意味がありません。そして先ほども話しましたが、そのためには確かな信頼関係に基づく広いネットワークが必要です。
こういったことができるのは、データサイエンスやテクノロジーの領域に強みをもち、かつ強力な顧客接点を持つリクルート住まいカンパニーだからこそです。私たちはそのためのロードマップを描いています。